すべてのゴジラ映画を観てきた自分だからこそ書けるシンゴジラの功罪
ついに「シンゴジラ」を観ることに成功した。
正確には「シン・ゴジラ」だそうだが、そんなことはどうでもよい。
【警告】
この記事は、シンゴジラについてのネタバレを盛りだくさんに含んでいるので、まだ観ていない人は読まないほうがよい。
また、シンゴジラを観ていない人にアドバイスをするが、事前に過去のゴジラ映画28本すべてを観ておくことを、強く推奨する。
もし、その前にシンゴジラを観てしまった人には同情を禁じ得ない。
【警告おわり】
シンゴジラは、もう上映してから何ヶ月も経過している。自分も公開初日からtwitterなどで強烈なネタバレをモリモリくらっていたので、すでに内容はある程度の予想がついてしまっていたが、じっさいにスクリーンで目にすると、それなりに楽しめた。
電車の爆弾を見たときは、テレビで放映することは一生なさそうな「新幹線大爆破」を思い出してしまった。
事前のネタバレでは、石原さとみの演技がダイコンだと騒がれていたが、自分が観たところ、そんなことはまったくなく、たまに出る巻き舌の発音がイライラするだけで、これは完全に役どころを理解している好演であろう。
欲をいえば、胸の谷間はもうすこし露出しても、けっして下品にはならなかったのではないか。もったいない。
ゴジラが進化するというのも、新しい視点だったが、最初の形態はキモすぎてゴジラに見えなく、あとでコイツとゴジラが戦うんだろうと深読みしてしまった。
エラ部分から赤い液体が排泄されるのが、ものすごく不快な描写だった。
最初からゴジラの姿でよかった気がする・・・・。
巨大生物が出現しても逃げずにスマホで撮影する国民
巨大生物が出現しても会議をくり返すだけの日本政府
このあたりはギャグとして描かれているのだろうが、いまさらとくに目新しいモノでもなく、途中でブラックアウトして「中略」と画面に表示されたときは、寝落ちしそうだったので正直助かった。
けっきょく、お役所仕事しかできない政府の面々は、ゴジラの直接攻撃を受けて全員死亡し、その下の者たちが指揮を取ることになる。
紆余曲折を経て、ゴジラに対して最終攻撃をしかけるシーンは、まちがいなくゴジラ映画中ナンバーワン。
とくに、ゴジラの背中から何本も発射される紫色のレーザービームの描写は、圧巻。
しかし、引きで映されたそれは、地方の大きなラブホテルにしか見えなかったのが気になった。製作中、だれもそうは見えなかったのだろうか。
最後、わざとゴジラに徹底的に攻撃をさせて、ゴジラ体内の放射性物質を減らせたので、ゴジラを凍結することに成功した。
日本政府は保身にしか興味がない政治家というウミを出し切ったから正常に機能した。
ゴジラには放射性物質というウミを出し切らせたから凍結することができた。
つまり、こうだ。
「ものごとを抜本的に解決するためには、悪いウミを出しきらないといけない」
そんな漠然としたメッセージ性を感じずにはいられなかった。
そういえば、自分は子どものころ、両親に叱られるときに「おまえは橋の下で拾ってきた」などとよく言われたものだが、ほかにも「言うことを聞かないとサーカス小屋に売るぞ」と脅されたことが何度もある。
両親のサーカス小屋観についての是非はここでは問わない。
「サーカス小屋に売る」と言われたときの恐怖は、はかりしれないモノだった。
恐怖がはかりしれない時点で、自分のサーカス小屋観にも問題がありそうだ。
とにかく、サーカス小屋に売られたら終わり、死ぬまでこき使われるというイメージが当時の自分にはあったのだ。
そこで、ゴジラである。
新しい映画が制作されるたびに、日本に対する脅威だったり、日本を守るいいヤツだったり、日本に警鐘を鳴らす象徴的な存在であったり、ただのギャグキャラであったり、子供だましの観る価値もない映画の主人公であったり。
すべてのゴジラ映画を観た。
すべてのゴジラを見た。
その結果、自分はゴジラのことを、「東宝」というサーカス小屋で何年たってもこき使われている、くたびれたピエロにしか見えなくなってしまった。
お客さんが多く入ったら、手柄はすべてサーカス小屋の団長のモノ。
お客さんがぜんぜん入らなかったら、ピエロのせいだとムチで打たれる。
どっちに転んでも、ピエロは一生こき使われ続けるだけ。
陰で不当なあつかいを受けていると知ってしまった客は、そのピエロがどんなにすばらしい演技をしたとしても、笑って拍手を送ることはできないだろう。
シンゴジラのエンディングロールでは、過去のゴジラ映画のテーマ曲がつぎつぎと流れてきて、もう自分はボロボロと涙が止まらなかった。
もはやゴジラ映画の新作が「かわいそうなゾウ」にしか思えないのだ。
だからもう。
どうか、そのピエロを、開放してあげてほしい。
これが、すべてのゴジラ映画を見てきた自分が出した結論である。