序説
午後8時13分。
「ふぁぼっても、いいんだよ?」
彼女のそのツイートで、世界が、動いた。
彼女のツイートを見た者すべてが、ふぁぼった。
彼女のツイートを見た者すべてが、リツイートした。
彼女のツイートを見た者すべてが、ふぁぼったあとに、リツイートした。
一般的には、ツイートから10分間以内に10回リツイートがないと、そのツイートが100ふぁぼに到達することはないとされている。
しかし、彼女のそのツイートは、そういうレベルを超えていた。
5秒後には1000回リツイートされ、さらに拡散スピードは伸びていった。
興味本位で彼女のツイートのURLを何度もリロードする者がいた。
彼がリロードするたび、そのツイートのふぁぼとリツイート数のケタは増えていった。
街でスマホの画面を見ながら彼女のツイートをリツイートした若者がふと空を見上げると、日没から数時間たった夜空にキラキラと輝いているなにかが降ってきているのに気づいた。
なにかが降ってきている気がする。
しかし、アレがどこに落ちるのかは、わからない。
そんな、なんとなく降ってくるんだなあという感覚。
隕石なのかどうなのかも、わからない。
ただ、アレが落ちてきたらヤバイよな? とだけは、彼にも理解できた。
スマホの画面を見続ける者。
空を見上げる者。
自分の最後の瞬間は、どうしたらいいのか。
スマホの画面を見ているほうがいいのか。
空を見上げているほうがいいのか。
スマホの画面を見る。
空を見上げる。
上がる。
下がる。
食べる。
吐く。
攻撃する。
防御する。
辛い。
甘い。
スキ。
キライ。
チ◯◯。
マ◯◯。
DQ。
FF。
生きる。
死ぬ。
ある行動を選択した瞬間に、その逆の選択は失われる。
人生は、選択の繰り返し。
選択を誤った時点でゲームオーバーになるかもしれないし、アメリカンドリームのような大富豪になれるかもしれない。
人生は、選択の繰り返し。
ずっと健康でいられるかもしれないし、若くして不治の病になるかもしれない。
そして、そんなことはどうでもよく、それぞれの立場はそれぞれに、それぞれの時間は流れていくのである・・・・。